「推し」という言葉が新語・流行語大賞にノミネートされ、一般社会に広く浸透した現代。しかし、男性アイドルを熱狂的に応援する文化のルーツをたどると、その歴史は半世紀以上前の1960年代、グループサウンズ(GS)ブームにまで遡ります。

1. 「失神」と「親衛隊」の時代(1960s-1970s)

1960年代後半、ザ・タイガースをはじめとするGSが爆発的な人気を呼ぶと、コンサート会場では興奮のあまり「失神」するファンが続出しました。当時のアイドルは雲の上の手の届かない存在。情熱は時に暴走し、社会現象としてニュースで報じられることも少なくありませんでした。

1970年代に入ると、ファン同士が組織化し「親衛隊」と呼ばれる団体が形成されます。お揃いのハッピを着て一糸乱れぬコール(掛け声)を送る姿は、アイドルのコンサートに欠かせない熱気の一部となっていきました。

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2. ブラウン管越しの「王子様」(1980s-1990s)

1980年代は音楽番組の黄金期です。「ザ・ベストテン」や「夜のヒットスタジオ」などを通じて、毎週テレビの中で輝く「王子様」をブラウン管越しに応援するスタイルが定着しました。切り抜きを下敷きに入れたり、カセットテープに録音したりと、日常の中にアナログな形でアイドルが溶け込んでいた時代です。

3. そして「推し活」へ(2010s-現在)

SNSの普及と共に登場したのが「推し(おし)」という言葉です。「ファン」という受動的な立場から、「推す」という能動的な行為に言葉が変わり、アクリルスタンドを持ち歩いたり、メンバーカラーのグッズを日常使いしたりと、応援活動はライフスタイルそのものへと昇華されました。

もはや「推し活」は、ただ熱狂するだけではなく、ファン自身の人生を豊かにするためのポジティブな活力源となっているのです。